日本舞踊 演目

日本舞踊│演目紹介『連獅子(れんじし)』

投稿日:

歌舞伎や日本舞踊と聞いてパッと頭の中に思い浮かべる映像と言えば、白い髪の毛や赤い髪の毛を振っている格好を思い浮かべることが多いのではないでしょうか?

最近では歌舞伎役者を使ったCMなどでも見かけるので、より一般なのでしょう。

今回ご紹介する演目『連獅子(れんじし)』は親子の獅子による情愛の舞踊となります。

どこかで見かけたあるような扮装なので、内容を知るとより楽しくなるかもしれませんね!

連獅子(れんじし)の歴史

素踊りでの連獅子 演者:四世家元七々扇花瑞王、花助

解題 勝三郎連獅子(れんじし)
初演 1861年5月 花柳芳次郎名披露目の会
種類 長唄
作詞者 河竹黙阿弥
作曲者 長唄/杵屋勝三郎
振付 初代花柳寿輔
役者 親獅子/花柳寿輔 子獅子/花柳芳次郎

白の頭が親獅子、赤の頭が子獅子 演者:七々扇万左春、宇女美

解題 正次郎連獅子(れんじし)
初演 1872年5月 村山座初演
種類 長唄
作詞者 河竹黙阿弥
作曲者 長唄/杵屋正次郎
振付 初代花柳寿輔
役者 能師左近/坂東彦三郎 能師右近/沢村訥升
瑞希
この作品は勝三郎連獅子と正次郎連獅子の二つあるんだけど、近年踊られることが多いのは正次郎連獅子です。
違いはいったいどういうところなんでしょうか?
和なびちゃん
瑞希
歌詞を増補し杵屋正次郎が作曲しなおしたことに加え、見せ所を多くしたことにより舞台用として好まれているんだ。

この曲は初代花柳寿輔が長男の芳次郎の名披露目のおさらい会を催した時に、河竹黙阿弥が踊り地として書いたものです。

連獅子の内容

前ジテ

親子の狂言師に扮した2人が手獅子をもって踊り、親獅子が子獅子を深い谷底に蹴落として駆け上がってくる勇猛心があるかどうかを試そうとします。親獅子は蹴落としながらも我が子のことが心配ですし、子獅子はなんとしても這い上がろうとする気持ちが存分に表れている踊りなので、とても親子の情愛を感じます。

後ジテ

親獅子は白、子獅子は赤の長毛をかぶって登場し勇壮に舞い狂い、髪洗いや巴、菖蒲打ちなどの毛を振るう技巧をたっぷりと見せてくれます。

ここ最近の日本舞踊の会などでは正次郎連獅子が一般的であり『連獅子(れんじし)』と書いてある場合は正次郎曲を指します。

また勝三郎連獅子で行う場合は『勝三郎連獅子』と呼んで区別されています。

前ジテと後ジテの間には狂言『宗論(しゅうろん)』か『胡蝶(こちょう)』が入ります。

宗論(しゅうろん)

法華僧 演者:七々扇瑞希

能狂言の同名の曲を原曲とした作品。

浄土僧 演者:七々扇花瑞孝

違う宗派の僧が旅の道ずれとなり、お互いの宗派の良い所を語り宗論をするが、熱くなった結果お互いのお経を唱えてしまうというお話。

胡蝶

一般的な舞踊会では連獅子を踊る場合はツナギに胡蝶が選ばれることが多いのではないでしょうか。

九代目団十郎によって上演された『春興鏡獅子(しゅんきょうかがみじし)』の間狂言にできたもので、九代目団十郎の愛娘に踊らせるために作られたそうです。

連獅子(れんじし)の舞台面は?

衣装付きや素踊りによって舞台面は変わる 演者:七々扇万左春、宇女美

舞台面

連獅子舞台面の一例

舞台面は素踊りで行う場合は屏風張りが基本となります。

背景を松羽目で行う場合が基本です

その他に松羽目物が続いたりする場合、演出上変えなくてはならない時は上記図のような舞台面などが選ばれます。

小道具

白が親獅子で赤が子獅子です 演者:四代目家元七々扇花瑞王、花助

・手獅子(白/親 赤/子)
・牡丹の枝(白 赤)
・扇子

手獅子の扱いが特徴的な演目なので、衣装付きでも素踊りでも必ず扱えるようにしておきたいですね。

衣装

前ジテは能仕立てということもあり、狂言師の衣装となります。

後ジテは衣装も変わり大口袴を履き鬘(かつら)も長毛となります。

連獅子(れんじし)とはどういった踊り?

親子の情愛がよくわかる作品『連獅子』 演者:四世家元七々扇花瑞王、花助

親獅子は百獣の王たる威厳を備え、子に対する愛情を深く持っています。

心を鬼にして子獅子を蹴落とす親獅子であったり、子獅子も水に映った親獅子を見つけて勇猛に山を駆け上がる場面がやはり見どころになるでしょう。

抑々是は尊くも~

狂言師の格好で前ジテは踊る 演者:七々扇万左春、宇女美

手獅子で踊る場面です。

歌詞の内容は獅子のいる清涼山というところの説明や、石橋を渡るとその先に文殊菩薩がいると伝えられていることなどを唄っています。

峰を仰げば千丈の~

親獅子の一人踊り 演者:四世家元七々扇花瑞王

親獅子の一人踊りとなります。

ここは扇子を使って踊ります。

子獅子の一人踊り

親獅子が一人で踊った後は子獅子が一人で扇子を使って踊ります。

かかる険阻の巌頭より~

いよいよ崖へと子獅子を落とす場面 演者:四世家元七々扇花瑞王、花助

ココがポイント

子獅子の動きも次第に激しくなってくるので前ジテではここの場面に注目してもらいたいです。

親獅子に蹴落とされまいとあらがう子獅子、心を鬼にして谷へと落とそうとする親獅子。

この親ならではの必要な厳しさを踊りで表現しているので、見てるほうも引き込まれることでしょう。

登り得ざるは臆せしか~

子獅子を蹴落とした親獅子が子獅子を心配する場面。

本舞台を崖上、花道を谷底と表現しています。

親獅子をみつけた子獅子は勢いよく本舞台へと向かいます。

合いの手~(引っ込み)

花道をつかって引っ込みます 演者:七々扇万左春、宇女美

前ジテはいよいよ最後となります。

胡蝶と戯れながら、手獅子を使って踊り、そして花道へと引っ込みます。

後ジテ 花道より出

衣装も変わり後ジテとなります 演者:七々扇万左春、宇女美

間狂言を挟んだ後、本舞台に二畳台を置き、花道より親獅子、子獅子が登場します。

獅子団乱旋の舞楽のみきん~

牡丹をつかって踊ります。

衣装や舞台背景とあわせて非常に美しい場面です。

合いの手~(毛振り)から終幕

写真がなくてわかりづらいですが、ここでいよいよ毛を振ります。

毛振りが終わるとそのまま『獅子の座にこそ直りけれ』という歌詞で決まって終わります。

連獅子(れんじし)まとめ

前ジテと後ジテで違いもあるので楽しめる作品である 演者:七々扇万左春、宇女美

瑞希
親子の情愛が注目されるこの作品だけど実は『獅子の勇猛な性格の人格化』が重要なんだ。
厳しい親とそれに負けない子の感情はとても伝わりましたけど…獅子の人格化は難しそうですね。
和なびちゃん
瑞希
難しい分、感動を与えられる踊りだから十分お稽古してから踊りたいですね。

いかがでしたでしょうか?

日本舞踊や歌舞伎をあまり見たことない方でも、よく知っている扮装の『連獅子(れんじし)』は見た目だけではなく非常にわかりやすい親子の情愛をテーマにした踊りです。

先ほども述べた通り、獅子の性格を人格化することもとても大事な踊りなので、研究とお稽古が大切な作品です。

また衣装付きだけではなく素踊りでも人気がある作品です。

とても見かけることが多い作品だと思いますので、見かける機会があれば親子の情愛や獅子の人格化に注目して観てみてくださいね

それではまた次回に!

 

おすすめ記事一覧

-日本舞踊, 演目

Copyright© 和なびブログ , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER5.