江戸時代には吉原という有名な遊郭がありました。
そこに住み込みで働く幼女のことを『禿(かむろ)』と言います。
幼少時代から高級女郎のお世話をしながら遊女としてのあるべき姿を学ぶ『禿(かむろ)』。
本日はその『禿(かむろ)』を題材にした日本舞踊作品『羽根の禿(はねのかむろ)』についてご紹介したいと思います。
日本舞踊を習う上で必ず習う曲となりますので、基礎を学ぶには最適の曲です。
それでは見ていきましょう!
Contents
羽根の禿(はねのかむろ)の歴史
解題 | 春昔由縁英(はるはむかしゆかりのはなぶさ) |
初演 | 1785年1月 江戸桐座初演 |
種類 | 長唄 |
作詞者 | 瀬川如皐 |
作曲者 | 初代杵屋正次郎 |
振付 | 二世西川扇蔵 |
役者 | 三世瀬川菊之丞 |
禿とは?
遊郭では6歳から13歳までを禿(かむろ)として、14歳から振袖新造(ふりそでしんぞう)となり接客を開始します。
高級遊女となるためには日ごろの努力が大事であり、苦労が絶えません。
忙しいさなか、『たまたま正月に休みが取れて子供らしく羽根を突いて遊ぶ』というのがこの踊りのストーリーとなります。
禿が新春の楽しさに、羽根をついて興じている姿は、子供ならではの愛らしさが欠かせない踊りとなっています。
日本舞踊としても『歌舞伎踊り』から始まり、『関の小万』、『羽根の禿(はねのかむろ)』と続く練習曲となりますから、踊りの振りも自然と基礎を中心とした振付のため踊りやすい曲です。
羽根の禿(はねのかむろ)の舞台面は?
舞台面
装置は『新春の廓の籬の外部場面』とされています。
大道具の通称では『大格子』と呼ばれる定式道具が使用され、それに加えて季節感をあわせて設置します。
『羽根の禿(はねのかむろ)』の季節は正月松の内の午前中のため、新春を飾る門松や注連飾り(しめかざり)も欠かせません。
小道具
・羽子板
・ぽっくり(赤い鼻緒)
・羽根(差金)
などなど、流派や演出によって使用する小道具は変わりますが、大体上記種類になると思います。
衣装
・着付/赤地金糸銀糸色糸縫 松竹梅模様の広袖、又は薬玉
・帯/黒地に金糸銀糸の縫 矢の字結び 手まり縫
・襦袢/赤地に縫
・小裂/玉子のしごき足袋(白)
羽根の禿(はねのかむろ)とはどういった踊り?
『羽根の禿(はねのかむろ)』は子供が習い始めにお稽古をする曲で、これにより『おすべり』『たもとの持ち方』『足の踏み方』『首を振る』などを練習し習得をしていきます。
踊りとしては『いつも花魁をのしぐさを見ているので、禿も少しませていてるがやはりまだ子供』であるのが理想です。
子供が踊る分にはそれっぽく見えるので問題はありませんが、大人が踊る際はわざとらしく子供っぽく踊るようではだめです。
心から童心に帰って踊るのが大切なのです。
出 誠こもりし一廓~
羽子板をつかって踊る場面となります。
『まるい世界や粋の世に 嘘とは野暮の誤りと』という歌詞がありますが、廓の中は粋で何事にも察しがよく思いやりがある。そしてそれは嘘だという人もいるが、それは野暮な人の誤解だと禿は笑っている。という内容です。
歌詞を読み解くと、やはり普通の女子よりはませているのかもしれないですね。
禿かむろと沢山さうに~
たもとを使った踊りとなります。
場面はクドキとなり子供ながらに大人の恋の事情などを知ってることに恥ずかしさを感じています。
おすべりやたもとを使って踊るので基礎が学べる場面となります。
文がやりたや~
ココがポイント
引き続き手踊りで踊り地を踊ります。
軽快にリズムよくクドキで学んだ基礎をベースに踊ります。
歌詞では『突くつくつくには羽根をつく』とあるようにここから『羽根の禿(はねのかむろ)』とされる所以でしょう。
流派によっては羽子板をもって踊る場合もありますが、七々扇流では手踊りとなります。
子供らしさを感じられる愛らしい振付となっています。
梅の匂ひよ桜は花よ~
散らしは羽子板を使って踊ります。
写真である通りぽっくりもはくので最初と同じ格好となります。
舞台上で板付きで終わる場合や、花道への引っ込みなど演出によって最後は異なります。
羽根の禿(はねのかむろ)まとめ
子供が子供らしく踊るにはこの『羽根の禿(はねのかむろ)』はもってこいの曲でしょう。
しかし大人が演じる場合はぐっと難易度が上がります。
大人が子供心を忘れずに踊るのは難しいからです。
私たち教えている側の人間でも、子供から学ぶことも多いということです。
こういった基礎が十分に含まれる曲は日本舞踊を習う上で必ず通る道ですので、大事にお稽古をしていきたい曲となります。
それではまた次回に!