歌舞伎や日本舞踊である演出『引抜き(ひきぬき)』というのを知っていますか?
簡単に説明すると一瞬で衣装が切り替わる演出です。例:白い衣装から赤い衣装になる
通常『引抜き(ひきぬき)』の演出は女踊りに多いですが、この作品はとても珍しく女踊りから『引抜き(ひきぬき)』をして男踊りにかわるという作品です。
もうこの段階で『小原女(おはらめ)』という作品が気になりませんか?
ということで今日はとても珍しい演出の日本舞踊作品『小原女(おはらめ)』を紹介していきたいと思います。
Contents
小原女(おはらめ)の歴史
解題 | 奉掛色浮図画(かけたてまつるいろのうきよえ) |
初演 | 1810年8月 江戸中村座初演 |
種類 | 長唄 |
作詞者 | 二世瀬川如皐 |
作曲者 | 九世杵屋六左衛門 |
振付 | 市山七十郎 |
役者 | 三世中村歌右衛門 |
大原女について少し補足すると文献によれば…
【大原女】
・着物を短くしてひざを出す。
・模様のないたすきを使う。
・白手ぬぐいをかぶる。
【小原女】
・ひざを出さない。
・模様入りのたすきを使う。
・紺色でふさがついている手ぬぐいをかぶる。
中世,大原郷に住み「ふすべ木(大原木)」を売り歩く女性は,すべて“小原女”と呼ばれたもようです。その後大原・八瀬など京の北方から町中へ大原木を売りに来た女性たちは,在住の場所を問わず“小原女”または“大原女”と呼ばれるようになり,近世以後になって大原の女性を大原女,八瀬の女性を小原女と区別するようになったようです。レファレンス共同データベース
頭に荷を載せて、京の街に黒木や炭などを売りに来ていた女性のことを大原女または『小原女(おはらめ)』と呼びます。
また『引抜き(ひきぬき)』後は『国入り奴(くにいりやっこ)』となり槍を担いで殿様のお供で領地へはいる踊りへと変わります。
前半は『小原女(おはらめ)』で女踊りを、後半は『国入り奴(くにいりやっこ)』として毛槍踊りとなるので、変化に富んでおり非常に見ごたえのある作品です。
小原女(おはらめ)の舞台面は?
舞台面
前半の『小原女(おはらめ)』は京都大原付近の背景とする場合か京都の三条あたりとする場合などその時々によって変わります。
後半の『国入り奴(くにいりやっこ)』の場合は松並木やその他写真にある通りのお城が見える背景、又は宿場近き街道筋の場面などこちらも様々となります。
小道具
・黒木
・おかめの面
・綾竹
・わら草履
・毛槍
・福草履
・奴差
小道具もそれぞれ演じる役に応じて変わります。
衣装
『小原女(おはらめ)』
・黒のつむぎ
・帯は白地に紫色の段染の中吊模様
・手甲
・脚絆
・白足袋
・前かけ大原女染
『国入り奴(くにいりやっこ)』
・白い衣装に錦糸釘抜き紋
・海老茶に金糸輪違の縫
・襦袢は赤地に釘抜模様金糸縫いの首抜き
・伊達下り
・小裂(こぎれ)
・三里あて
・肉じばん
衣装も前半は黒色なので後半が白色のとなるとガラリと色合いも変わるので見ごたえ間違いなし!
小原女(おはらめ)とはどういった踊り?
前半の『小原女(おはらめ)』は黒木売りの女性の風俗舞踊となります。
そして後半部分は『国入り奴(くにいりやっこ)』として奴踊りを踊ります。
わしが在所は~
小原女の踊り方は独特でお姫様や町娘、などの役柄とは違い、足を上げて踊るのが特徴的です。
頭に黒木をのせて花道よりでてまいります。
恋には八瀬の里育ち
本舞台に入ってまいり、クドキとよばれる踊りに入ります。
八瀬の里育ちの女の恋模様を唄に乗せて女性らしく踊ります。
おかめの面をつけてるので少し三枚目のような雰囲気ですね。
兎角思う様になぁ~
綾竹と呼ばれる小道具を使って踊ります。
ココがポイント
綾竹を使って足拍子でリズムを取り軽快に踊ります。
まずここで『小原女(おはらめ)』の踊りはクライマックスとなり踊り地(おどりじ)として楽しめる場面です。
さらにこの後『国入り奴(くにいりやっこ)』となるべく『引抜き(ひきぬき)』の準備にも入りますので、しっかりと見ておきましょう!
振りやれお振りやれ~
『国入り奴(くにいりやっこ)』の踊りが始まります。
花道まで毛槍を振りながら進み花道で、お殿様にお供をする奴踊りとなります。
御国堺の松の木の下り枝~
本舞台では毛槍をつかった踊りへと変わります。
ココがポイント
自分の背丈よりも大きな毛槍を担いだり、振り回したりと中々豪快な踊りです。
奴踊りらしい場面なので楽しめるでしょう。
だめな事ばし言わしやるな~
『国入り奴(くにいりやっこ)』の踊り地です。
写真は『やぁ~れさてなぁ~』とセリフも言っているので急に声を出すからビックリしないでくださいね!
最後のクライマックスの踊りとして存分に楽しめます。
掛け奉る宝前に~
散らしの場面では再度毛槍を持って終幕へと踊ります。
小原女(おはらめ)まとめ
『小原女(おはらめ)』は黒木売りの女性の風俗を踊ったり、後半の『国入り奴(くにいりやっこ)』としてお殿様にお供する奴踊りになったりするので間違いなくその変化を楽しめる日本舞踊作品になっています。
踊りわける技術もさることながら、『小原女(おはらめ)』のパートでは下に『国入り奴(くにいりやっこ)』の衣装を着たまま踊っているので体力も必要とされます。
それだけ大変な踊りではありますが、その分『引抜き(ひきぬき)』という演出がとても映える作品となっています。
是非ご覧いただく際は前半後半と存分に楽しんでください!
それではまた!