この男達を知らない日本人はいないのではないか?
その男達とは『武蔵坊弁慶(むさしぼうべんけい)』と『牛若丸(うしわかまる)』のことである。
五条の橋の上で繰り広げられた戦いは、幼き時期に本で読んだか、又は聞かせられたかわからないがどういう訳か知っている。
皆さんはどうでしょうか?
恐らく名前くらいは聞いたことあるでしょう。
今回は五条の橋の上で繰り広げられた戦いを元にした日本舞踊作品『橋弁慶(はしべんけい)』について紹介していきたいと思います。
Contents
橋弁慶(はしべんけい)の歴史
解題 | 橋弁慶(はしべんけい) |
初演 | 1912年4月 歌舞伎座 |
種類 | 長唄 |
作詞者 | 不明 |
作曲者 | 三世杵屋勘五郎 |
振付 | 不明 |
役者 | 牛若丸/片岡我衛 武蔵坊弁慶/市川段四郎 |
『橋弁慶(はしべんけい)』は元々能楽作品でもあります。
内容は日本舞踊でも一緒でありますが、簡単にあらすじを説明すると…
あらすじ
五条のあたりに辻斬りが出ると聞いた弁慶は五条の橋へと向かう。一方牛若丸は月を楽しみながら薄衣をかぶり五条の橋を歩いている。薄衣をかぶった牛若丸を弁慶は見て女だと思い通り過ぎようとすると、その刹那牛若丸によって長刀の柄を蹴られてバランスを崩す。喧嘩を売られた弁慶は怒り長刀で切りかかる。牛若丸も小太刀で応戦。こうして五条の橋上で有名な弁慶と牛若丸の戦いが始まったのである。
とあるように、弁慶が五条の橋で牛若丸と出会い、そして戦った話を日本舞踊にした作品です。
この歌の設定では辻斬りをしていたのが牛若丸ということになっており、弁慶がその物の怪を退治するために五条のあたりをあるいているという話ですが、一般的に有名なのは弁慶が橋の上で刀狩をしていて、それを牛若丸が退治するという話ではないでしょうか?
両方のパターンが残っているのでどっちが正しいかは今となってはわからないですが、この歌では牛若丸が辻斬りをしていたようです。
橋弁慶(はしべんけい)の舞台面は?
舞台面
衣装を着ける場合は松羽目と言われる舞台面となります。
またその場合は五条の橋での話ということもあり『橋掛かり』を使います。
素踊りの場合は屏風張りに『橋掛かり』を使うことが多いでしょう。
衣装付きにせよ素踊りにせよ各流派によって演出が異なると思いますが、大方こういった舞台面になると思います。
小道具
・桂桶(かつらおけ)
・笛
・中啓又は舞扇
・太刀
・薙刀
立ち回りと呼ばれる刀での戦いが主になるので、小太刀と薙刀を使います。
衣装
衣装を着ける場合は松羽目ものになるので大口袴(おおくちばかま)をつけます。
能の形に近い衣装となるでしょう。
素踊りで踊る場合は弁慶は紋付に袴。
牛若丸の場合は男の場合は紋付に袴。
女性の場合は紋付で踊ることが多いです。
橋弁慶(はしべんけい)とはどういった踊り?
立ち回りと呼ばれる刀を使った戦いがメインの踊りです。
牛若丸と弁慶の出会いから、戦いへと移りそして弁慶が牛若丸に忠誠を誓うまでが踊りとしてつくられています。
さても牛若は~
牛若丸の出の場面。
下手又は花道より薄衣(かつぎ)をかぶってでてきます。
写真にもある通り、ここでは笛を持っています。
着たる鎧は黒革の~
弁慶の出の場面。
牛若丸と同じく下手又は花道より出てきます。
力強い大薙刀を使った踊りです。
弁慶は自分の前では魔物も面と向かって立ち向かうことはできないと自信満々で五条の橋へと向かいます。
薄衣かつぎ立ち給うを~
弁慶が牛若丸を見つけるが、薄衣(かつぎ)をかぶっているため、女だと思い、声をかけるのをためらっている場面です。
弁慶は僧侶なので女色を禁じている。その葛藤が見て取れます。
牛若かれをなぶりてみんと~
牛若丸がすれちがいざまに大薙刀の柄を蹴って弁慶を挑発する場面です。
ここからいよいよ立ち回りの踊りへと移ります。
牛若は少しも騒がず太刀抜き放ち
いよいよ牛若丸と弁慶の戦いが始まりました。
弁慶は大薙刀で牛若丸は小太刀で応戦します。
ココがポイント
刀と薙刀での戦いの踊りは迫力満点。
力強い弁慶に対して牛若丸は軽やかに刀を使って戦うので見ていてとても楽しいと思います。
また足拍子なども入ることでリズミカルで音にものせられること間違いなし!
物ものしやと薙刀を~
弁慶は牛若丸の強さに驚きます。
今度は薙刀を大きく振りかぶって打ち込みますが華麗に牛若丸にかわされてしまいます。
弁慶が何をしてもかわされてしまうため牛若丸の軽快さが目立つ場面です。
そしていよいよ薙刀を打ち落とされてしまいます。
不思議や御身いかなれば~
降参した弁慶が牛若丸に名を訪ねる場面。
お互い名乗りあい主従の誓いをします。
契約かたく仕つり~
弁慶が牛若丸に主従の誓いをし薄衣(かつぎ)を担がせ九条の館までお供をするというところでこの踊りは終わります。
橋弁慶(はしべんけい)まとめ
皆さんいかがでしたか?
伝説の人物でもある弁慶と牛若丸の出会いを舞踊化した作品『橋弁慶(はしべんけい)』。
元の話が有名であることに加え、刀と薙刀での立ち回りの踊りは迫力満点です。
物語がしっかりと舞踊化してあるので、初めて見る方もきっと楽しんでいただけるでしょう!
機会があったら是非見るだけではなく踊ってみてはいかがですか?
それではまた!